急いで安全な群れの中へ

要領の悪い子もいますから

ヒロアカの轟君

「ペンギンうらない」ってご存知ですか。

あの有名な「Suicaのペンギン」の生みの親、さかざきちはる先生がTwitterで更新されているイラストと言葉のシリーズです。

「うらない」と言いつつ、要するに「今週は試しにこれを心がけてみよう」といった、おそらくさかざき先生のセルフコントロールも兼ねた「例題」みたいなものだと俺は解釈しています。

今週はこういったものでした。

最近かなり切羽詰まっており、そういえば長いこと「推し活」みたいなことしてないなぁというか、今夢中な「推し」っていないなぁ、と思った。

ので、試しに作業から離れてアニメでも見てみるか、と、ちょっとずつ見ている僕のヒーローアカデミアの視聴を進めた。今第49話、3期の真ん中くらいまできました。

 

俺にとっての「推し感情」ってほぼ「劣情」つまり「消費的感情」なので、
こういうガチでアツい少年漫画ってあまり推しキャラできないんだよね…とか最初は言っていたんですが、ダメだった。轟焦凍君が好きすぎる。
てかあんなん好きじゃないやつなんかいないだろっていうわかりやすい人気キャラにハマってしまい、むっちゃ悔しい……。チクショウ…好きだ…

疲弊した人間にとって「推し活」って結構推奨されることのようで、まぁエネルギーを消耗している者が何かを消費することで回復するのはその通りだなと思った。
ペンギンうらないの導きもあるし、そして俺にとっての推し活は「推しを語ること」なので、今日はここで轟君の話をします。(照れ隠しの長い前置き)

 

 

3期まで見てるともう「そういえばそんなだったっけ…」って感じだけど、入学当初の轟君ってだいぶツーンとしてて、クラスメイトのことなんか眼中になさそう…という印象だった。まぁ、能力学園モノには必ずいるよね…ってタイプの、人を見下してるけど実際優秀なので周りも文句は言えないみたいなポジション。

だと思ってたのが、その人を寄せ付けない態度が実は複雑な家庭環境から来ていて、
そして体育祭にて、その「固執」と「ある種のトラウマ」をデクに粉砕される。
それも「僕は君を肯定する」だけじゃなくて「目の前の僕を否定するな」というエゴ感情もちゃんと乗せてくるのが、デクのすごいところだし、同じ苛立ちをかっちゃんも持ってるというのが、いいよね…体育祭…

「そのキャラが一番言われたかったことを主人公が言うシーン」ってどんな作品でもグッとくるけど、この時の轟君、食らった顔は見せるけど、完全に動揺するでもなく、
クールに「ありがとな」と返すあたりも、めちゃめちゃカッコいい………
轟君って全くカッコつけてなくて、ただ性格がひたすらカッコいい人なんだろうなと思う。ずりィ〜〜〜……

「トラウマを粉砕」と書いたけど、実際、一言言われたくらいで子供の頃の全てが帳消しにできるわけじゃなくて、特に嫌いな親父のことはともかく、大好きなはずのお母さんの言葉の方が重く引っかかっていて、そんな簡単に克服できるものじゃないよね、っていう展開も、なんかもう、ウウ…(泣)

 

で、体育祭以降の轟君は、ひとつ大きな「殻」を破った、かなり素の態度で過ごせているんだと思うんだけど、その「素」の良さが尋常じゃないんだよ。
今までのピリピリ度合いはあくまで「父親への反発」が態度に出ていたもので、それがなくなった轟君の、かなり純度の高い「素直さ」が、いい…。

かっちゃんのように特別プライドが高いわけでもなく、かといって自分の能力の高さをちゃんと自負していて、自信もあるので、人に対する警戒心がない。
そもそもがあまり他人に強い興味がある方じゃないんだろうけど、自分にとって大事だと感じた人を抵抗なく「友達」と呼べる(それも父親に「友達が困ってるかもしれねぇ」って言える…)。学食も皆と一緒に食べるし、たぶん週末遊びに誘ったら(お母さんの見舞いとかなければ)普通に来てくれるんだろうな…。

そしてなんだかんだ箱入り息子だった故の世間知らずさ(ついでにデリカシーもあんまない)と、その世間知らずさを特別気にしてる様子もない天然さ。ほんとに何!?
体育祭後の日常寄りのパート(「ハンドクラッシャー」のくだりとか…)が「意外」の連続すぎて、一気にめちゃくちゃ好きなキャラになりましたね…。
ていうかこの「意外さ」にデク達クラスメイトも視聴者と同じようにビビってんのが良すぎる…

 

 

ヒロアカのキャラ造形(見た目と性格両方)って、かなりアイコニックというか、マンガっぽいんだけど、でも「そういうバックグラウンドだったらそうだよなぁ…」とか、「その属性の人って意外とこういうところあるよね…」と思わせる説得力があって、なんかもう、怖いんすよね…。
作者がそれこそデクみたいに、周りの人間に興味がありすぎて、相当な観察・分析をしてるんじゃないか。そうでもないとこんな人数こんな深掘りして描けないよね…。
「リアル」じゃないかもしれないけど、「リアリティ」がある。納得させられる。

 

轟君って一見「個性最強でNo.2の息子でそれ故のトラウマもあってその上顔がいいって、しかも実は天然て、属性盛りすぎだろ!!」って感じるズルすぎキャラなんだけど、物語を追っていくと全部の要素にある程度の裏付けがあるんだよね。
(いや顔がいいのは裏付けとかないけど…「人は生まれながらに平等じゃない」ので…)

それに、側から見て「ズルすぎだろ!」って言われる人間にも、その立場なりに思うことがあったり、気にしてることがあったりして、普通に生きてるわけで。
っていう「生活感」みたいなものが轟君には結構あって、そこがいいなぁと思う。

 

 

そういう「萌え」目線で好きという面もあるんだけど、
俺個人のパーソナリティ的に「微妙な親との折り合いをつける」というテーマはやはり大きくて、そういった面で、轟君良いなぁと思うところもたくさんある。

というのも、親が親として微妙な時に子供として一番キツいのって、「その親と自分に共通点がある」というところで、自分の中にある親に似た部分を否定することで親を否定したい、という心理めちゃくちゃわかるんですよね。

ていうかまだ俺はその部分が整理ついてないなとすら思う。自分のどこを強みとして、どこを親譲りの悪い面として分けるのか、悪い面を良い面として活かす方法はないのか。その「どう活かすか」こそが「(親の力じゃなく)君の力じゃないか」と言わしめる部分なんだろうな。

 

なんにせよトラウマがあって、それが自分の枷になってると感じた時、
自分が凝り固まっているだけなら、ただスッと手放せばいいし、
そうではなく「傷」として残ってしまっている部分は、ゆっくり時間をかけて向き合っていけばいい。
体育祭後の轟君の行動はすごく整理されてるなと思う。
地が優秀だからというだけじゃなく、「自分のなりたいもんになろう」という指針がはっきりしていて、そこに向かう意志の強さの成すところなんじゃないかな。

 

轟君の良さっていうか、轟君というキャラクターはヒロアカの良さが出てるキャラだなぁという話だったかもしんない。
満足したので終わります。ヒロアカ視聴いずれ追いつくから待っててくれ……